自作4脚ロボットを作る!第7回「製作環境」

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こんにちは!ROBOSPOTの木内です。

今回はロボットを製作する環境についてご紹介です。ROBOSPOTの設備を中心にご紹介していきます。

 ロボットを設計する際、製作設備についてはよく考慮しなければなりません。ここを考えておかないと実際には作れない可能性が出てきます。
 特にROBOSPOTを初めとした加工サービスに依頼を出す場合、形状や材質に制約がかかってきますので注意して設計していきましょう。では、ある程度実際の事例を交えながら簡単に紹介していきます。

【切断加工】
 基本中の基本の加工です。ただ一言で“切断”といっても、ただ板と板を2つに分けたりする以外に、フレームなど何かしらの部品を素材から切り出す加工も含みます。ロボットをフレームから自作する場合には一番多い加工内容かと思います。
 切断にはハサミ、カッターなど簡単なものからバンドソーなどの機械力を使った加工まで幅広くあります。

・バンドソー(コンタ)
 帯状のノコギリ刃が高速回転し切断する工具です。木材、樹脂から軽金属まで幅広い切断加工に対応していますが、曲線状の加工は苦手としています。また、加工精度は低くなりますので寸法出しにはヤスリなどを併用します。ROBOSPOTでは大まかな切り出しや、板材の切断に使用しており、お客様にもご利用いただけます。

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【切削加工】
 ヤスリを使った削る作業から、旋盤やフライス盤を使った機械加工のことです。素材を切り削ることで形状を出していきます。素材をそぎ落としていくため切断も可能ですが,効率は切断専門の機材に劣ります.単純な切断ではなく,複雑な形状や部品表面への彫刻,高精度が必要な場合に適しています.現在は後述するNC技術により、高精度での自動加工が可能です。

・旋盤
 円筒状の素材を回転させ、そこに刃物を当てて素材をそぎ落とすことで,軸物(円筒形)の部品を形成する加工機です。

・フライス盤
 刃物を高速回転させ、テーブルに固定した素材を削ることで部品を形成する加工機です。平面上に複雑な形状を製作する際や、切断面の仕上げなど円筒形以外の部品を作る際に使用します。

・NC旋盤
 旋盤を自動化した加工機です。後述のNCフライスの旋盤タイプです。

・NCフライス盤
 フライス盤をNC(numerical control)プログラムと電動モータにより自動化した加工機です。コンピュータで製作した図面どおりに正確に部品を作り出してくれます。ROBOSPOTの加工サービスでも、これを使って部品製作をしています。平板形状以外にも、プログラムと機材によっては3次元形状を製作することが出来ます(ROBOSPOTでは平板のみ取り扱いです)。

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【曲げ加工】
 板金やパイプなどを曲げる加工です。平板に垂直面を立てたり、箱型を作ったりと様々使用します.ただし、材料を変形させていることになるので強度は下がります(ロボットのフレームが折れるところをたまに見ますが,たいてい曲げの部分で折れています)。

・板金曲げ機
 板金材を曲げる際に使用します。機材にもよりますが、寸法を適切にとれば精度良く曲げることが出来ます。また、概ね90度以下であれば任意の角度にも曲げることが可能です。ROBOSPOTでもご利用になれます(詳しくはこちら p.12より)。

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【穴あけ加工】
 ねじを通したり、軸を通したりと穴の加工は結構多用します。穴をあけるにはドリルを使いますがそのための機材もいくつか種類がありますので紹介します。

・ピンバイス
 手回し式の機材で小径のドリル刃を使います。主に樹脂や木材など柔らかい材質に、浅めの穴や少数の穴を空けるときに向きます。ただ、手回し式のため垂直な穴をあけるのは苦手です。

・ボール盤
 電動の機材で大径のドリルまで扱えます。刃にもよりますが金属の穴あけも可能で、機械式に上下させるため垂直な穴を空けることができます。ROBOSPOTでご利用いただけます。

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 以上ざっと紹介してきました。今回は大型の機材を中心に紹介しましたが、他にも様々な機材を使って製作していきます。ただ冒頭にも書きましたが、製作環境をしっかりと把握しておかないと実際には製作できない設計をしてしまうかもしれませんので注意して下さい。

 

自作4脚ロボットを作る!第6回「バッテリについて」

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こんにちは!ROBOSPOTの木内です。
 
第6回はバッテリです。パソコンやケータイにも使われている分、身近に感じるかと思いますが、自作のロボットに使うときは意外と気を使う部分です。使い方を間違えると破損し、最悪の場合発火することもあります。ここは十分な注意が必要です。

いきなり余談ですが、イントロダクションからここにいたるまで“バッテリー”ではなく“バッテリ”と書いています。これはJISに、英語発音で“3音以上の語には長音符(ー)を付けない”と規定されているためです。なので、コンピュータ、ラジエータ、コントローラといった標記になります。ただ読み方は“こんぴゅーたー”と長音で発音しています。まあ工学系のレポートや論文執筆時に気をつけたほうがいい、程度のことです。

さて本題です。バッテリはその内容物によって様々な種類に分かれます。が、全てのタイプに共通する内容もありますのでまずはそれから。

 

■性能の見方

電池の選定で注目するのは【電圧(セル数)】 【容量】 【放電能力】の3点でしょう。

電圧とは、ものすごくシンプルに言いますと、電気を流す力です。バッテリを選ぶ場合、ロボットに搭載するサーボにあった電圧を選択します。
例えば弊社製HVシリーズであれば9~12[V]で動作しますので、これにあう9V~12[V]のバッテリを選びましょう。バッテリの電圧値は中身の種類によってちがい、“セル”(電池でいう1本)と呼ばれる単位ごとに決まっています。「セル単位の電圧 × セル数」でバッテリの電圧が変わります。このセル数は後述するリチウム系バッテリで重要になってきます。

容量とは、バッテリの中に貯めることができる電気の量です(ものすごくシンプルに言いました)。850[mAh]であれば1時間に流し続けられる電流が850[mA]ということになります。サーボを動かすために必要な電流が1[ A] で1体に20個搭載しているとすると、動作には20[A]必要です。バッテリは850mAhですので0.85[A] ÷ 2[A] = 0.425 時間に戻すと約25分動作させることができる計算です。※実際は、動作によって電流が変化しますので使用可能時間は前後します。
ただし、バッテリによっては最低電圧が決まっているものがありますので、バッテリが空になるまで使えるのかよく確認し、コントロールボードの電圧カット機能を活用して安全に使用しましょう。

バッテリの放電能力は「その出力を流す」というものではなく、「繋がった回路から要求された電力を(定格出力を上限として)送り出す」といったものです。水路でたとえると、決してポンプでは無く、タンクに付いた蛇口とでも言えるということを覚えておくと良いでしょう。バッテリは必要な回路側の動作電圧さえ守れば、大容量のバッテリでも動作します。ただ闇雲に大容量バッテリを使うと、サイズ、重量、コストの面で無駄になりますので、目的に合ったものを選定するようにしてください。

リチウム系のバッテリですと、パッケージのラベルに20[C]、40[C]のような記載があります。これは、容量の20倍の電流を放電できるという意味で、850[mAh]だと17[A]の電流を流すことが可能です。

実際に性能の例を見てみましょう。弊社「ROBOパワーセルHV Dタイプ」の性能は「10.8[V] 800[mAh]」となっています。これは10.8[V]の電圧で0.8[A]の電流を1時間流し続けられる。という性能を示しています。つまりロボット側が1.6[A]を要求すれば、バッテリは30分持ちますよという性能になります。また、このバッテリは単4電池型のバッテリセルが9本束になっている形をしています。つまり1セルあたり1.2[V]のバッテリということになります。

ニッケル水素の場合、1セル1.2[V] × 9本(セル) = 10.8[V]となります。

リチウムフェライト(Li-Fe)
1セル3.3[V]ですので2セルで6.6[V]、3セルで9.9[V]です。

リチウムポリマ(Li-Po)
1セル3.7[V]ですので2セルで7.4[V]、3セルで11.1[V]です。

バッテリの種類によって電圧が違いますので注意が必要です。

 

■バッテリの種類

・Li-ion、Li-Po、Li-Fe(リチウムイオン、リチウムポリマ、リチウムフェライト)バッテリ

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リチウムを素材としたバッテリ郡です。リチウムイオン電池はノートパソコンやデジタルカメラにも使われている為、なじみがあると思います。現在のROBO-ONE本戦でも主流になっているバッテリです。
共通の特徴として、大容量でメモリ効果が少ない(よく誤解されている方がいらっしゃいますが全く無いわけではありません。)、放電特性が安定していて定格容量の数倍~数十倍の出力を発揮できる、そして良く燃える。ということが挙げられます。
リチウム系バッテリの充電は“バランス充電”と呼ばれる充電方法をとります。これはバッテリを構成しているセルをそれぞれ均等に充電していく方式です。そのため電源端子とは別にバランス端子がバッテリから伸びています。さらに定格容量の5倍程度の電流で充電できるものもある(全てではありませんし非推奨)ため、充電サイクル早くできます。ただ、専用の充電器でないと事故の恐れがあるため注意して下さい。
 非常に優秀なバッテリ郡で、小型のものでも十二分にロボットを稼動させられます。放電能力も高く、突発的に大出力が要求されても対応できるようになっています。
 ただし、特にLi-Poバッテリに顕著ですが、過充電、過放電による劣化、発火といった危険性があります。使用方法は商品の説明書にあるので間違わないように注意してください。弊社発売のLi-Feバッテリではこの点の耐久性が向上していますので、比較的安全にご使用いただけます。
 捨てるときは50%濃度の塩水に2週間ほど漬けて、内部の電解質を出し切ってから、電
池回収BOXなどの所定の場所に捨てるようにしてください。

・Ni-MH(ニッケル水素)バッテリ

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 Ni-Cdに変って登場したバッテリです。Ni-Cdに比べて充電可能容量が大きく、環境に対しても有害性が低い上、Ni-Cdバッテリと同じ電圧帯であるため、同じ機器でそのまま交換可能だったため、急速に置き換えが進みました。一般にはコンビニなどで売っている単3電池型のバッテリが有名ではないでしょうか。また安定性も高いことからハイブリットカーのバッテリもこのNi-MHバッテリが使われているようです。
 ※同じ“ニッケル水素”という読みでNi-H2バッテリというものがありますが、別物です。こちらは人工衛星などの蓄電装置として開発されたもので、まず一般では手に入りません。

・Ni-Cd(ニッカド)バッテリ
 ニッケル‐カドミウム系の材料が使われているバッテリです。放電の瞬発力が高く、放電の開始から終了直前まで安定した、電圧・電流値が得られることが特徴です。そのためモータなどの高出力用途に適しています。一昔前まではラジコンなどホビー用途でも主流名バッテリでした。
しかし、自然放電量が大きくメモリ効果も顕著に現れる上に、充電可能量も少なく、廃棄の際、含有しているカドミウムが環境に悪影響を与える為、主流ではなくなりました。
 ただし、低コストで生産できるため、今でも使用されています。

 

■使用上の注意をよく読んでからご利用ください。

前にも書きましたが、バッテリは使い方を間違えると重大な事故につながる場合があります。使用上のルールをよく理解したうえでご利用ください。

■こちらも合わせてご覧ください。

サポート記事『Li-Feバッテリーのメリットと注意事項』

サポート記事『KHR-3HV Li-POバッテリーのご利用について』

 

・ショート(短絡)は絶対にしない
電池の接点同士が直接つながってしまう現象をショート(短絡)といいます。こうなると、バッテリが使えなくなるだけでなく、発熱、発煙、発火につながりますので絶対にしてはいけません。特にバッテリの端子を変える場合など、電源線とGND線を同時に切ろうとすると、刃物を通じて短絡しますので注意して下さい。

・バッテリの種類に合った専用の充電器を使う
バッテリの種類によって充電方法や容量が異なります。必ずバッテリに合った充電器をご利用ください。
特にリチウム系のバッテリはバランス充電が必要ですので、この機能がある充電器を必ず選んでご購入下さい。

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Li-Fe / Li-Po用バランスチャージャー BX-10L

・充電容量以上のアンペア数では充電できない
まず、これを守らないとバッテリが火を噴きます。もしくは爆発します。動画共有サイトなどで「バッテリ 爆発」で検索をかけると、いろいろと危なっかしい映像を見ることができます。ぜひ一度見てみて下さい。バッテリに溜まる電気エネルギは結構バカにならない量が入っていると実感できます。

さて充電の話ですが、まずアンペア[A]は電流の単位です。そしてバッテリの充電容量単位標記は[mAh](ミリアンペアアワー)が一般的です。スマホの予備バッテリなどで知っている方も多いかもしれません。この単位の意味を考察すると「~[mA]の電流を1時間流せる(放電できる)」という意味になります。“ミリアンペア”なので1[A]は1000[mA]となります。
 実際の充電の際は、バッテリの充電容量が800[mAh]であれば、0.8[A]以下の電流で1時間以上充電する、という計算になります。つまり、“充電容量を守ると充電に1時間はかかる”ということになります。スマホの充電器は1~2[A]の出力ですが、最近のスマホの容量は2000[mAh]を超える容量なので時間がかかるわけです。充電の際はここが一番重要ですので、しっかりと確認して下さい。

・継ぎ足し充電は良くない(必ず放電してから充電する) ※ニッケル水素バッテリの場合
バッテリ(二次電池)は化学反応を使って電気を溜め、放出します。普通の電池との違いはこの化学反応が何回も繰り返し使えるという点です。さて、化学反応を使っているわけですから、これを途中で止め、かつ逆の反応を途中から始めるのは、全体に悪影響があるとイメージできるかと思います。ですので、バッテリは充電の前に放電をしておく必要があるということになります。
継ぎ足し充電をするとバッテリはメモリ効果という現象で、最大充電量から現在の充電量を差し引いた分、つまり今から充電する分しか使えなくなってしまいます。メモリ効果は一度完全放電して再充電(リフレッシュ)することである程度回復できますが、完全には元に戻らないため、注意が必要です。

リチウム系のバッテリは、このメモリ効果が少ない為放電せずに継ぎ足し充電が可能です。
※放電しすぎるとバッテリが破損しますのでご注意ください。

・調子が悪くなったらリフレッシュ ※ニッケル水素バッテリの場合
充電量が極端に減った、充電してるはずの分放電できないなどの場合にはリフレッシュが有効です。まず、完全放電したあと、容量よりも低い電流量でゆっくりと再充電します。これを何回か繰り返すと本来に近い性能を発揮できるようになります。これをバッテリのリフレッシュといいます。

・長期保存は少し充電して
 バッテリを長期間使わずに保存するときは、容量の半分程度を残して保管して下さい。充電容量いっぱいだと危ないです。ただ、完全に放電しきった状態で長期間放置すると、内部の化学物質が変質し、転極という現象でバッテリが使えなくなってしまいます。また、バッテリは何も接続せず、ただ置いておくだけでも放電していきますので、だいたい半分くらい充電して保管すると、自然放電での転極もさけられます。

バッテリについては以上です。
次回は「」のご紹介です!

乞うご期待!!

自作4脚ロボットを作る!第5回「パーツ選定」

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ロボットの部品は大きく「機械系」と「電装系」に大別できます。両方とも世の中にはさまざまな部品が販売されており、適切な部品選定が重要になってきます。

■作るか、買うか
まずはそもそも自作部品を使うのか市販品を購入するのかという話です。この基準は結構簡単で、次の2つに当てはまれば自作するより購入します。

1. そもそも自分で作れないもの(バッテリやコントロールボード等)
2. 作るより買ったほうがいいもの(ねじや軸受け等の規格品)

実際設計をしてみるとわかりますが、買えるものは買ってしまったほうが良いです。特に機械部品は自作よりほぼ確実に精度が出ていると考えられます。また、電装系は比較的自作でスペックを出せますが、こちらも部品同士の相性や技術的側面から購入できるのであれば買ってしまいましょう。
とにかくロボットの自作は結構労力がかかるものです。楽できるところは楽するようにすると長続きします。

さて、では実際どのように選定していくのか、簡単に紹介していきます。

 

■「機械系」について

・ねじ
 購入する規格品の代表格でしょう。細かい内容は前回の記事をご覧ください。

・軸受け(ボールベアリングなど)
 使う軸の太さを決めたらそれにあう軸受けを選定します。サイズ自体はJISやISOにより規格化されていますので、後はメーカのカタログを見つつ必要な性能のものを選定していきます。

名前が出てきたので、ここで【JIS】【ISO】について紹介します。

【JIS(じす)】
 日本工業規格(Japan Industrial Standards)という製品の規格です。一般にはJISマークで有名だと思います。日本の工業製品の寸法や耐久性、製図の方法、建築物の施工方法まで、工業の範囲内であらゆる事柄が企画化されています。ねじの径(M~など)を規定しているのもこのJISです。
 特に寸法が規格化されていますので、例えばJISにある軸径の軸(シャフト)には必ずそれに合う軸受けが存在する。その軸受けは、JIS通りの設置方法で設置すると性能をちゃんと発揮できる。というふうにJISにそって設計することで、さまざまな既成部品の恩恵を受けることが出来ます。
 ただ、JISの名称通り日本国内の工業規格ですので、次に紹介する国際標準のISOと統合が図られています。ちなみに“JIS規格”と言ってしまうと“日本工業規格規格”と言っているようなもので誤りです。

【ISO(あいえすおー、いそ)】
 国際標準化機構(International Organization for Standardization)という国際工業規格です。世界各国の規格標準化機関が参加し、策定しているもので、もちろん日本も参加しています。一般にはカメラの撮影感度の値(ISO6400)で有名ですね。
 この規格に沿うことで、例えばドイツで作られたねじが日本のナットにぴったり合う、といった具合に世界中の製品を取り扱えるようになります。

以上2つの規格が主にありますが、基本的にはJISに沿って製作すれば問題ないでしょう。JISの検索は日本工業標準調査会のホームページで可能です。

 

■「電装系」について

・バッテリ
 感覚的にわかりにくい要素が多いです。次回で細かく説明します。

・ボード、センサなど
 これらも数多く販売されています。特別な性能が要らない限り、使用サーボと同じメーカのものを使うと間違いが起こりにくいでしょう。必要であればホームページなどでデータシートを参照しながら確認していきます。

以上簡単に紹介しました。他にも様々な部品が販売されています。
何度も書きますが、購入ですむものは購入した方がいいでしょう。特に機械部品に関しては規格でサイズが決められているため、自作するフレームのほうを合わせていったほうがいい場合が多いでしょう。

ROBOSPOTのweb shopでもいろいろなパーツを取り扱っています!こちらもぜひご利用ください。

今回は以上です。
次回は「バッテリについて」ご紹介します!

乞うご期待!!!

自作4脚ロボットを作る!第4回「ねじと穴について」

こんにちは!ROBOSPOTの木内です。

ロボットの製作にねじは欠かせない要素です。サーボやフレームをガッチリと固定してくれます。
今回はそんなねじと、それを通す穴についてです。

■ねじの構造
ねじには棒に切る(形成する)「おねじ」と穴に切る「めねじ」があります。この二つがかみ合って間に挟まっているものを締め付けます。この締め付け固定のことを「締結」と呼びます。締結要素には、ねじ以外にもリベット、ピンなどがあります。

まずは「おねじ」を見てみましょう。

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「おねじ」は大きく分けて「ねじ頭」と「軸部」からできています。それぞれ細かく解説すると

【ねじ頭】
「おねじ」の頂点にある1段太い部分です。この部分で間に入る部材を「めねじ」側部材と挟みこんで固定します。ドライバやレンチでねじを回すのもこの部分です。
対応する工具の種類や形状でさまざまな種類があります。
そのため使う工具や使う場所のクリアランスを考えて形状を決めていきます。

【軸部】
ねじの細い部分で、ここにねじが切られます。軸のうち、ねじが切られていない棒部分を軸部と呼ぶときもあります。

【ねじ部】
軸部でねじが切られている部分のことです。特に軸部全体にねじが切られているものは全ねじといいます。また、ねじが切ってある部分のみの長さを「ねじ部長さ」といいます。

続いて「めねじ」です。
めねじは呼び径より小さい下穴にねじを切ることで形成します。もちろん規格品なので使用する「おねじ」と同じ呼び径のものしかあいません。

 

■寸法と用語
ねじにはいくつか特有の寸法があります。頭部形状とこれらの寸法、材質を指定することで、どんなねじを購入すれば良いか指定することができます。

【呼び径】
ねじの太さをあらわす規格寸法です(M2、M3など)。「おねじ」のねじ部外径とほぼ同じ値となります。

【首下長さ】
「おねじ」の軸部全体の長さのことです。必要な長さを確保しつつ、無駄な長さがないように決めます。

【ねじピッチ】
あるねじ山から次のねじ山までの距離のことです。通常は「並目」と呼ばれるものを使用します。市販のねじも特に記載がなければ並目ねじのことになります。他にも「細目」「タッピングねじ」「ユニファイねじ」などの種類があります。

【かみ合い長さ】
「おねじ」と「めねじ」のねじ部が実際にかみ合っている長さのことです。ねじ部とは違うものなので注意して下さい。

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番外:タッピングねじ
並目に比べねじピッチが大きめに取られたねじです。樹脂や木材などの下穴は空けられても「めねじ」が切れないような、やわらかい材料に対して使用します。並目の「めねじ」に入れると、ねじが壊れてしまいますので注意して下さい。

 

■ねじの強度
さて、ねじについていろいろと紹介してきました。ここからは設計に必要な強度に関する項目です。

まず、ねじの壊れ方には下のようなパターンがあります。

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もちろんどの壊れ方をしても物が固定できなくなりますし、最悪の場合部品ごと作り直さなければなりません。

ねじの強度は「材質」「太さ」「かみ合い長さ」で変化します。
上のパターンA,Bの壊れ方はねじの材質、呼び径の選定で防止します。

引張強度の計算式は下のようになります。
「材料の最大引張応力」×「ねじの有効断面積」=「ねじの引張強度」
せん断強度は上の結果を1/2することで概算可能です。
ここで有効断面積とは、ねじの呼び径によって決まるおねじの断面積のことです。

パターンCの壊れ方をする場合、かみ合い長さが短いということになります。例えば、ねじ部長さ10[mm]のおねじで厚さ4[mm]の板2枚を締結しようとすると、実際におねじとめねじがかみ合うのは2[mm]しかありません。これで壊れるときはもっと長いおねじを使う必要があるということです。

 

■穴について
では穴について。

部材をねじで締結するには「穴」が必要です。
ねじで締結される被締結材の穴は、通常ねじの呼び径より少し大きめの穴径で空けます(これをバカ穴といいます)。意外に思うかも知れませんが、同じ径の穴にはうまく挿入できないのです。これは工作精度によるもので、小さすぎると少しのずれで穴にねじが入らなくなり、大きすぎると締結してもガタつくようになってしまいます。
バカ穴は、使うねじの呼び径の10%増しの径にすると良いでしょう。

穴を空ける位置も重要です。部材の隅に寄せすぎると穴から千切れてきてしまいます。
そこで慣例的に、下穴もバカ穴も部材の隅から穴径と同じ分だけの余白を取っています。

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今回は以上です。
前回の材料についてと同様かなり端折っています(今回の内容だけで本1冊書けます)ので更に詳しい内容は書籍などを参照して下さい。

ではでは

自作4脚ロボットを作る!第3回「材料について」

こんにちは!ROBOSPOTの木内です。

ロボット製作に使用される材料は多々あり、用途によって適した材料を選定することが重要です。
 以下のような基準で選定していきます。

●密度
材料の単位体積あたりの質量のことで、この値に体積を乗算することで全体の質量が求められます。

●引張強度
材料が引っ張られたとき引きちぎられない(破断しない)最大の強さです。基本的に「強度」といえばこの値のことです。断面積に比例します。

●せん断強度(剪断強度)
材料がせん断(はさみで切るような)力を加えられたときの最大強さです。引張強度の1/2で概算できます。断面積に比例します。

強度に関しては、これらの値よりも大きい力が加わると部材が壊れてしまいます。そのため、加わる力をしっかりと想定した上で強度計算を行って下さい。このような材料の性質を「機械的性質」と呼びます。他にも様々ありますがホビーロボットに使用するくらいであれば上のもので十分です。各材質の機械的性質はインターネットで検索できます。

 

ロボットに使われる材料のうち代表的なものをいくつか紹介していきます。

【アルミニウム】

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フレームに使用される代表的な軽金属材料です。鉄よりも軽く(密度は約1/3)、加工性も良好なため多用されています。ただ一言でアルミといっても様々な種類があります。

・1000系・・・純アルミニウム(A1100など)
ほぼ100%アルミニウムで構成された材料です。折り曲げ加工が可能で加工難度は低いものの、粘性が高いため切削加工には向きません。また強度が低いため、フレームの材料としては向きません。入手性は高くホームセンターでも購入できます。

 

・5000系・・・Al-Mg系(A5052など)
マグネシウムを主添加物として加えたアルミ合金です。折り曲げ加工が可能ですが、粘性が高いので切削加工にはあまり向きません。中程度の強度をもち、最も多用されているアルミ合金とも言われています。ロボットのフレーム材料としてもよく使われており、ROBOSPOTの加工サービスで使われている板材もこの材質になります。専門店やオンラインショップで購入できます。

 

・2000系・・・Al-Cu-Mg系(A2017など)
ジュラルミンとして知られる、銅を添加することで鋼鉄並みの機械的強度を実現した合金です。折り曲げ加工には向きませんが、粘性が低く切削加工性は比較的良好です。航空機の材料として使用されるなど高強度を誇り、平板状フレームの材料に適しています。専門店やオンラインショップで購入できます。

 

【樹脂(プラスチック)材料】

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アルミと並んで多用されている材料です。厚手の材料でも容易に加工できるため、用途によってはアルミよりも優れた材料となります。

 

・POM・・・ポリアセタール(ポム、ジュラコンとも)
エンジニアリングプラスチックの代表格で、機械的特性、耐疲労製、耐候製に優れているためIT関係から自動車部品まで幅広く使用されています。軽量である程度の強度を持っているため、アルミと合わせてロボットのフレーム材料として使用されています。また自己潤滑性を持つことから、摺動部の受け部品としても利用されます。ROBOSPOTの加工サービスでもご利用いただけます。専門店やオンラインショップで購入可能です。

 

・ABS
ゴムが添加されたプラスチックで、機械部品やプラモデルの材料として使用されます。強度ではPOMに多少劣りますが、表面平滑性に優れており、専用接着剤での溶解接着、塗装が容易なので外装の材料として多用されます。耐候製はよくなく、直射日光などで劣化します。ROBOSPOTの加工サービスでもご利用いただけます。専門店やオンラインショップで購入可能です。

 

・FRP・・・繊維強化プラスチック(GFRP、CFRPなど)
Fiber Reinforced Plasticsの略称で、ガラスなどの高弾性な繊維とプラスチックの複合材料です。軽量で非常に高い強度を誇り、航空機や高級車などで使用されています。アルミの代替として使用した場合、大幅な軽量化が可能ですが、弾性変形しやすいので、剛性の確保には形状や組み合わせ等で工夫が必要です。切削加工の難度は非常に高く、含有繊維の吸引は人体に有害なため、専門業者に加工を発注するのが一般的です。ただし専門店、ウェブショップ、ラジコン店などで切板の購入は可能です。

設計の前にしっかりと材料を選択し、強度を考えておけば、完成した後すぐに壊れてしまうといったことは避けられます。また、製作環境も考慮して材料選定を行いましょう。

 

今回は以上です。

次回は「ネジと穴について」です。

 乞うご期待!!!

自作4脚ロボットを作る!第2回「サーボとトルクのお話」

こんにちは!ROBOSPOTの木内です。

今回から4脚ロボットの設計から一旦離れて、設計の為の基礎知識を数回に分けてご紹介します。まずはロボットの中でも重要なサーボモータから。

 

サーボモータ(以下サーボ)を簡単に言えば、動く角度を決められ、位置を保持することができるモータのことです(厳密には違いますので詳しくは各々で調べて下さい)。ホビーロボットの場合、サーボは各関節の可動軸毎に使われることが多いです。例えば弊社製KHR-3HVであれば基本状態で17軸、拡張で22軸化が可能となっていますが、これは基本状態で17個、拡張で22個のサーボ搭載が可能ということになります。

 

さて、設計するときには前回取り上げたように概ね軸数が決まっていると思います。それらの可動軸に対してどんなサーボを適応するか、特に発揮トルクから考える必要があります。

 

ここで言うトルクとはざっくり「サーボの力」のことです。

弊社製KRSシリーズサーボのトルク表記の単位は「N[kg・cm]」となっています。つまり、「1[cm]先でN[kg]のものを持ち上げられる力を出せる」という意味になります。
図にするとこのとおり↓
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このトルクが荷重に対して充分でないとロボットがうまく動作しませんし、最悪サーボが壊れます。またトルクの単位からわかるとおり、荷重点までの距離が遠いほど発揮できる力は小さくなります。

今回は、KRS-3204を使用しますが、トルク9.3kg・cmを出力しますので、10cm先で0.93kgのものを持ち上げられる計算になります。

 

以上を踏まえて設計していきますが、ただトルクの高い(パワーの出る)サーボを使えばいいというわけではありません。

例えば二足歩行ロボットでは機体サイズ(脚長)を長くすれば、歩幅やバッテリーなど搭載するもののサイズを大きくすることができます。しかし機体規模が大きくなるとサーボの必要トルクが大きくなり、対応する為にパワーの出る大きいサーボを搭載すると全体の重量がより重くなり・・・といった悪循環に陥る為、必要トルクをしっかりと決めて設計することが重要になります。

必要トルクは次の式から概算できます。

  機体重量 + 持ち上げたい重量 ≦ 必要トルク(モータ発揮トルク) × 0.8 ÷ 軸間距離

上の式で必要トルクを0.8倍していますが、これはサーボが最大トルクを発揮し続けないよう、余裕をもたせるために乗算した値です。この値は私が慣例的に入れている値なので特に根拠はありません。ただし余裕が大きいほどロボットの動作は安定します。また、軸間距離はある可動軸から次の可動軸までの距離のことになります。ヒト型二足歩行ロボットであれば、足首関節から膝関節までの距離といった具合になります。

今回は以上です。

次回は、ロボットにつかう材料についてです。

乞うご期待!!!

 

自作4脚ロボットを作る!第1回「下書きを描いてみる」

こんにちは!ROBOSPOTの木内です。

第一回は下書きです。まずは設計図の下書きとして紙に手書きでイメージを描いてみます。

製図ではありませんので正確に書く必要はありませんが、だいたいのイメージをつかむためにある程度はしっかりとかきましょう。

 

まず要求仕様をもとにロボットの大まかな形と使用するサーボやケーブル、ホーンなどのパーツやコントロールボード、受信機、バッテリーなど搭載するものを考えます。大体の目処がついたら、部品の配置を考えながら全体の概形を決めていきます。

欲しい可動軸、可動範囲を実現できるように部品配置をするのがポイントです。また、バッテリーの脱着しやすい搭載位置、ケーブルの配線などに注意していくと完成度が上がります。

今回実際に描いたものがこちら↓です。 
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4脚ロボットなので同じ脚が4本と前後左右対象のボディで構成します。また、使用サーボがKRS-3204に決まっているので、その形に合わせて配置してあります。

 このときサーボのトルクに不安がある場合は、軸間距離を短くもできる配置にしておくと、後の設計作業が楽になります。今回のロボットでは脚のサーボを斜めに重ねて軸間距離を短くしつつ、コンパクトになるように工夫しています。

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ただ、厳密な寸法はまだ考えません。あくまでもざっくりと大まかに描きます。

 

今回は以上です。この工程で頭の中のイメージを具体化しておきましょう。
次回からは設計のための予備知識編。まずはトルク計算からです!

乞うご期待!!!

自作4脚ロボットを作る!第0回「イントロダクション」

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こんにちは!ROBOSPOTの木内です。

これから新企画と致しまして「自作の4脚ロボットの設計から製作」までを解説付きでご紹介します。

ROBOSPOTの加工サービスについても紹介しますので、ぜひご利用ください。

使用するサーボはKRS-3204 ICSです。
一脚に3個使いますので合計12個使用します。

コントロールボードはRCB-4HVを使用します。
HeartToHeart4を使えば簡単にモーションが作れますので、プログラミング言語なしで誰でもロボットを動かすことができます。

さらに、無線コントローラとして春に発売予定のKRC-5FHを本社から試作品を借りて使用します。
ねじ穴位置などを変更すれば別のモジュールでも取り付けられますので、無線機取り付けの参考にしてください。

今回は4脚ですが、二足歩行ロボットもほぼ同じ手順で設計製作できますから参考にしてくださいね。

 

本編は次回から開始します!

まずは、手書きの設計図から!!

 

【連載もくじ】
※都合により変更する場合があります。

・手書きの下書き

・トルク計算

・穴径とねじ穴について

・材料について

・パーツ選定

・制作環境

・脚部の設計

・胴体の設計

・バッテリーユニットの設計

・アセンブリ~チェックまで

・切削データの作成から依頼まで

・バリや曲げなど追加工

・電装系の準備

・組み立て

・モーション作成

・完成

 

乞うご期待!!!